Works

2024年 千葉稲毛ギャラリー 大きな錆

千葉いなげギャラリー 旧神谷傳兵衛稲毛別荘 「大きな錆」
8月14日~25日
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千葉市在住の美術家・下野友嗣さんの個展を開催いたします。
 下野さんは、鉄錆の可能性を信じ、鉄錆を紙やナイロンに転写する
表現を探求している作家です。
 金属の腐食によって生成され、ネガティブなものとして捉えられる
ことの多い「錆」を、早さや効率を求められる現代社会においての
効率の悪さや人間らしさ、侘び寂びの心に通じるものとして捉えて
いる下野さんは、鉄錆を「人間の感情を表現できる最大ツール」と
考え、その表現を探求し続けています。
 鉄板を水で腐蝕させ、時間をかけて乾かすことで紙に定着させて
いく版画のような技法は、同じ版を使用していても、ひとつひとつ
異なる模様や滲みを生みだし、また腐食という現象を用いることに
よって、大地とのつながりや、原始的な行いを想起するような作品
を作り出しています。
 本展では「誰かに伝えていく」ということをテーマに、当館近隣学校
(稲毛中学校、稲毛国際中等教育学校、稲毛高等学校)の美術部生徒が
下野さんと一緒に制作した作品も展示しています。下野さんの技術
や経験を中学生や高校生へ伝えることで生み出された、新しい表現
をぜひご覧ください。
千葉市民ギャラリー・いなげ
ワークショップ概要
■日 時
稲毛中学校      : 2024 年 6 月 29 日 ( 土 ) 13:30 ~ 16:30
稲毛国際中等教育学校 : 2024 年 7 月 27 日 ( 土 ) 13:30 ~ 16:30
稲毛高等学校     : 2024 年 7 月 27 日 ( 土 ) 13:30 ~ 16:30
■場 所
千葉市民ギャラリー・いなげ 1 階 第 2 制作室
■講 師
下野友嗣氏(千葉市文化新人賞 奨励賞受賞作家)
■参加者
稲毛中学校      :13 人(1 年生 8 人 2 年生 2 人 3 年生 3 人)
稲毛国際中等教育学校 :10 人(1 年生 5 人 2 年生 2 人 3 年生 3 人)
稲毛高等学校     : 3 人(1 年生 3 人)
■内 容
 千葉在住のアーティスト下野友嗣さんと一緒に、ビーズワックス(蜜蝋)
を使ったモノタイプ(一点もの)の版画ワークショップを行う。あわせて
参加者全員による作品も制作し、完成した作品を会場で展示する。
 ビーズワックス版画は 2000 年頃に誕生し、プレス機や機材がなくても、
手軽に版画独特な質感を出すことができる技法。
■目 的
 鉄錆を使った作品とプロジェクトタイプの作品を制作してきた下野さんが、
自身の作品に通じるモノタイプの技法や経験を生徒に伝えることで、作品
と展示を共につくりあげる

学生のワークショップ作品
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学生と共同で制作した作品
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制作について
学生にアルミ紙に切ってもらい画面に貼ってもらう。そのまま私のアトリエにもって帰りアルミ紙の錆を紙に転写して制作しました。
アルミの錆があまり付かなかったのでカビを使い制作しました

2024年 ディズニーに奪われた熊 
正面作品7000×1500 水彩用紙に鉄錆 ベンガラ アクリル(緑の部分)
正面作品下の熊の形2枚 べニアにベンガラの顔料(700×400×80)、(450×250×80)
床に置いている作品15枚 PPC用紙にベンガラ 720×480 

今年の初旬から熊の目撃情報でニュースが賑わっています。私は、2010 年より熊をモチーフにした作品を制作しており、その頃から熊の事を調べて います。私なりに熊の為に何か出来ないのかを考えましたが、思い浮かばず 平行線にいます。 仮に熊が絶滅すれば、人間も絶滅する火種を作るきっかけを作る事は必然 になります。なぜなら自然界の食物連鎖のトップである熊がいなくなれば自 然界に与える影響が大きく、爆発的に増える生き物や減少する植物も出てくるからです。それにより人間の食べるものにも間接的に影響します。
爆発的に増えた生き物は人間が調整をする事になりますが、その生き物が コロナウイルスのように人間へ害を与えるウイルスに汚染されていると人間 が絶滅まで追い詰めることになります。しかしいずれは絶滅の連鎖が人間に も影響するのではないでしょうか。

ここから先は憶測になりますが、人間以外の動物が次々と絶滅する頃には 人間の社会は今とは違ったものなっており、貧富の格差や人間の社会にも植 物連鎖のようなものが生まれ、命が平等でなくなった社会の中で食物連鎖の 下位から絶滅していくのではないでしょうか。マウス実験のユニバース 25 のような状態に近づくのではないかと思います。

絶滅を防ぐ方法があるとすれば、人間の科学力で自然を凌駕する事ですが、 カルダシェフスケール では、「タイプ1」の文明でようやく自分の惑星の 自然エネルギーをコントロール出来るようになるといわれています。なお人 間はこの文明までいくのに数百年かかると言われています。人間は、それまでに地球の環境に合わせて上手に生きて行かなければなりません。その為に は、熊の絶滅は避けなければならない事になります。
千葉は「熊なし県」といわれるように、連日ニュースに流れているような 人に危害を与える熊はいませんが、他の県にはいない熊がいます。それはディ ズニーにいる熊です。熊は、昔から人間の赤ちゃんと似せてキャラクターと して企業による商品で流通されてきました。無理やりにはなりますが、ドー キンスが言う利己的な遺伝子 の進化の最上級の「ミーム」なのではないか と考えると、熊が少しでも救われるのではないかと思い、ディズニーの熊を モチーフにして制作しました

ユニバース 25  1970 年代にアメリカの行動学者ジョン・B・カルフーンによって行われた社会行動学の実験。 理想的とされる環境下でのマウスの行動や社会構造の変化を観察することを目的とした。適切 な環境と資源が確保されていても、過密状態や社会的役割の欠如がストレスや行動異常を引き 起こす可能性を示す。結果の解釈には議論の余地がある

カルダシェフスケール  1964 年に旧ソ連の天文学者ニコライ・カルダシェフが考案した、宇宙文明の発展度を示す三 段階のスケール。「タイプ 1」文明は、その惑星で利用可能なすべてのエネルギーを使用および 制御できる。「タイプ 2」文明は、恒星系の規模でエネルギーを使用および制御できる。「タイプ 3」文明は、銀河全体の規模でエネルギーを制御できる。

利己的な遺伝子  リチャード・ドーキンスが 1976 年に刊行した世界的ベストセラー『利己的な遺伝子』。著者は、 生物の進化が遺伝子の複製と伝達によって駆動されており、遺伝子は自らの複製を最大化する ために個体を操作し、時には利他的な行動も引き起こしていると主張する。著書の中では、模 倣によって人から人へと伝達し、増殖していく文化情報・文化の遺伝子である「ミーム」の概 念を導入し、文化の進化も説明している

ベンガラの顔料について
ベンガラは鉄錆を燃やした色で神社の鳥居に使われています。鉄錆が発生する時には、シアノバクテリアや鉄錆を食べるバクテリア等色々なバクテリアが存在し、これらを物理的に炎で燃やす行為は殺す行為であり燃やし切った鉄錆はバクテリア達が死んでしまった事になります。鉄錆が燃えてバクテリアが死んでしまった色は赤いベンガラ色になり神聖な色として日本では扱われてきました。赤いベンガラ色は、全ての顔料の中も洗濯しても中々取れない色でもあり色として強い色になります。この粘り強い色が生命の力強さだと考えてベンガラを使い制作をしています。

2024年 熊と結婚した女の人 2枚1組 1200×620 パネルに和紙 鉄錆 ベンガラ アクリル(緑の部分)
ネイティブアメリカンの古い民話で熊と結婚した女の人の話があります。この話は日本の童謡の「森のくまさん」の元ネタになります。アジア、アメリカの地域では陸上生物最強なのが熊であった為、人は熊に憧れと恐れがあり、時には神的な存在として扱われてきました。又、精神世界では人と熊の境界線が現在より近かった事を作品鑑賞者に伝えると共に、現在絶滅しそうな熊の存在を比較する展示をしたいと思い制作し、上記の熊の作品と一緒に展示した作品になります。

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